新しく茶庭を造る方へ 茶庭 造園 作庭
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初めて茶庭を造る方へ
茶庭を造る事になった場合、
さてどうしたら良いか分からない事だらけです。
茶庭は和風庭園と違い、茶事をする目的があります。
そうなると、
おのずと茶道を学んでいる方に限定されて行きます。
茶道を学んでいると言っても流派がたくさんあり、
武家流の遠州流や石州流、町人の茶の千家流の表千家や裏千家や武者小路千家など、たくさんの流派があります。
まず、茶庭は流派によって違います。
手と口を洗うところの蹲踞ですが裏千家では手燭は蹲踞の右側の石の上に置きます。他の流派は違います。
竹で出来た戸の枝折戸も裏千家では亭主側から左に開くようにします。これも他の流派は違います。
これは流派の作法により異なります。
ご自身の学んでいる流派の茶庭を造る事になります。
とは言え数百の流派がありますので、庭師がそれを全て把握している訳もありません。
なので分からない事は自分の師匠と相談しながら庭師さんともご相談して造られると良いでしょう。
さて、ここから裏千家での茶庭の造り方をご紹介します。
あくまでもこれは当社のやり方ですので参考にしてください。
また、淡交社に庭の本がたくさん出ております。
それも参考にして頂きたいのですが、、、
お客様でまれにいらっしゃるのが「淡交社の本には、書いて無かったのでそれは、違う」と言われる方がいます。
淡交社の庭の本はあくまでも一例ですし、本に出てくる庭師さんの考え方も違います。
千家流の教えは「教外別伝、不立文字」で本質までは本では伝えられません。
では、実際にどのようにして茶庭を造っていくかをこれから
お話しをします。
新築で建てた場合と、いま住んでいる家の庭を茶庭に改修する場合をご説明します。
1・まず新築の場合、建設会社で建てた場合は
①外構工事を建築した建設会社で行い、庭も住宅メーカーの外構工事でやって貰う。
メリット
・支払いが建物と一緒にローンが組める。
・打ち合わせが一社なので、建物と外構、庭の連携が上手くいく。
デメリット、
・茶庭に関しては茶道を知っている設計者がほとんどおらず、茶庭風のアンバランスな庭に落ち入りやすい。
建築主の意見をしっかり伝える事をする事、建築主が庭の知識を学ぶ必要があります。
メリットは雰囲気をガラリと変えられる。
デメリット、今の外構を壊すので新築より高額になる。
メリット、低額で改修出来る。
デメリット、出来上がって古い外構と新しい庭が最初は馴染まない事がある。また、外構が古いままなので新しい感じはしない。と言う事になりますが、これは庭師さんと相談してください。
◎それでは茶庭を造る工程となります。まずは茶庭は茶事を目的としてますのでその流れと人の動きを考えます。
茶事の流れとしては、
沓脱石から出る→正客は躙口の近くの飛石へ避けて連客は飛石の奥へ次客より進んで並び、正客は先頭になるように戻って、亭主からの送り礼を受ける。
となります。言葉ではなにやら難しいですね。
茶事が出来るための茶庭に必要なのは
順を追って説明していきます。まず、茶庭と言えば蹲踞と石灯籠です。
(淡交社、自慢できる茶室をつくるために より)
蹲踞では身口意(しんくい)の身と口の二つを清める場所で、手は身体を代表して全身を表しており、手を清める事は身体を清める事、口は災いのもとで口を蹲踞の水で清める。
なにやら高尚な場所のようですね。その蹲踞ですが
自然石と石造物に分かれます。
読んで字のごとく自然石の石に穴を開けて水を溜めた物です。茶事で使うには、大きさは少なくても8寸(24cm)以上は欲しいです。
なので上の部分は平な物が良いと思います。
有名なものは裏千家の四方仏の手水鉢などがあります。
良い石造物の手水鉢が有れば使っても良いと思います。
手燭が乗れば良いです。手水鉢よりは低く、湯桶石よりは高く据えます。
3.湯桶石(ゆとういし)
湯桶と呼ばれる湯が入った桶を乗せて置く石です。
湯桶は冬に行う夜咄の茶事に出される物です。
掛樋が有るメリット、
・手水鉢の水が常に綺麗になる。
・茶事では無く、稽古の時は順次来るお弟子さんが手水鉢で手を清められる。
・清々しい水の音
・茶庭に湿度が保てる
デメリット
・お水代がとても掛かる。(水道局に漏水と疑われる事も実際にある)
・水に鳥や動物が来る。東京はタヌキが多いのでタヌキがここに糞をする(これは縄張りのマーキングだろうか?)。都心部でもハクビシンが増えているのでハクビシンが来る。
・普段は蓋をしているので汚れる事は無い。
・もちろん水道代も掛からない。
・だいたいは掛樋がついてるところが多いので、自分だけついてないと不安になる。(だいたい付いているのは庭の飾りで茶庭では無く、和風の庭のデコレーションです)
・蹲踞を清める水を別な場所から運んで来るのが手間になる。
・庭に湿度が保てない。
掛樋(筧)が有る場合は
・排水管に水抜き穴から取り付けので排水管より高い位置に取り付けないと水が流れないので海が浅くなる。
海を深く造れる。(掛樋が有る場合は排水管に繋ぐ必要があるので海の底が排水管より高く無いと水が流れない浅くなる。)
ちなみに裏千家今日庵の蹲踞には掛樋がありません。
海が深いです。使う石もわりと大きめ、とても細やかな技術を使って造られています。
・特にありません。理由として掛樋が無ければ深くても浅くても関係が無いからです。
よく茶室の本や写真集などで見る物です。
・本格的な茶室と茶庭になる。
・なんといっても風情がある。
・高額になる。数百万円以上
・土地が必要になる。
・建ぺい率の事や固定資産の課税対象になりかねない。
・現実的
・費用がかからない。
・特に思い浮かびませんがしいて言えば広い土地なら、風情が少ないと思う人も居るかもしれません。
・椅子の対応年数により、買い換える必要がある。
・椅子の収納場所に困る外腰掛に関しては、敷地の広さと費用との相談になります。③飛石の種類について
があります。
おすすめは山石です。
・表面が凸凹しているので濡れても滑らない。
・表面が凸凹しているので露地に水を撒いた時に飛石に水が溜まり、それを半東が拭きに出なければならず手間である。
・表面が平ら
・数と形が揃いやすい。
・濡れると滑りやすく転ぶ事があり、年配者は要注意
・山石と違い形が揃うので単調な飛石になる。
理由
メリットと言われれば、値段が安く数が揃う。
しかし、古くて良い物が有ればとても良いと思います。
かつて大徳寺のお坊さんに教えて頂いた事ですが、「飛石は山石が良い。それは自然を傷つけないからだ。切石は山を削って切り出して来るし、川石は自然の流れを変えてしまう恐れがある。自然を傷つけない事が大事で茶室が小さいのもその為だ」
とおっしゃってました。あくまでも、これはその方のご意見なのですが、使ってみると山石が一番、茶庭には使い易いです。
延段について
これについては、
1.花崗岩の切石だけで造る「真」の延段
2.花崗岩の切石と自然石を取り混ぜて造る
「行」の延段
3.自然石だけで造る「草」の延段
それぞれ解説していきます。
(桂離宮)
3.「草の延段」
自然石のみは裏千家の兜門から今日庵の玄関まで続くあの延段です。
こんな時に歩幅がどこかで老若男女の足並みを揃える事を考えて見る事を参考にしてください。
これに関しては竿と呼ばれる下の部分が土に埋まっている。埋け込み灯籠が良いです。
織部灯籠が一番多く使われてます。
その他に六角灯籠などもあります。
なぜに小さめの埋け込み石灯籠を使うのかは、諸説あり定かでは有りません(利休の創意だとか、他の方の総意だとか諸説あり)
朝鮮型灯籠も数奇者の方の好みで東京の茶庭に使われてます。大型で数奇者のお客様にお使い頂くと良いでしょう。
一番使われているのが織部灯籠です。
隠れキリシタン灯籠とも呼ばれ、聖母マリアを彫ってあるなどとも呼ばれます。
しかし、当時使われたお手本が残ってないので正確には分かりません。
この埋け込み灯籠は何が良いかと言うと、地震で倒れない。
東日本大震災の時に東京の石灯籠はたくさん崩れて倒れました。
しかし、埋け込み灯籠はまったく動じなかったのがほとんどで驚きました。
蹲踞は素敵なのに石灯籠を安く済ませんようとすると台無しになります。
逆に蹲踞をそんなにお金を掛けなくて石灯籠だけ良いものを使うと勿体無いと見えます。
茶道具と同じで取り合わせです。全てのバランスを考えて選びます。この石灯籠の高さや位置は夜咄を想定して設置すると良いでしょう。
・風情がある。
・世の中に同じ物が無いので良い物を探すので仕入れに手前がかかる。
・金額時価なので業者も買いつけに行くまで分からないので見積もりが曖昧にならざるを得ない。
・金額が分かるので見積もりしやすい。
・安い
・入手が楽
・風情が無く、安く感じる。これも全体のバランスで取り合わせましょう。
これは竹で編み込んだ戸です。
二重露地以上の場合は取り付けます。
裏千家では枝折戸がほとんどです。
他の戸
ヒジツボ(蝶番)が左の柱に付いています。理由は裏千家では、夜咄(暁など)の時に右手に手燭を持ち迎え付けに行くからです。
工程としてはブロックを高さまで立ち上げ、塗装剤で仕上げます。
・頑丈、
・外から見ると建物とマッチする。
・長持ちする。
・茶庭の雰囲気と言うより、外構と言う風情。
また、ブロック塀があるのでセキュリティ面で安心です。
2.アルミフェンス
1のブロックより、オープンな感じになります。
メリット、
・外構がオープンな感じになり風通しが良くなる。
・カラーバリエーションが豊富なので庭や建物に合わせられる。
・セキュリティがクローズドガーデンになるので安心
・アルミ材を使用しているので多少は高額になる。
・純粋な茶庭には現代的なアルミフェンスは似合わない場合もある。これは極端な純和風の家のみで稀な話です。
杉皮の塀を造ると茶庭らしくなります。
・茶庭には見た目に良く、和の風情がある。
・自然の材料なので柔らかな印象になる。
・数年置きに作り直す必要がある。
・柱を木材にした場合、台風などで折れて倒れる事がある。※柱だけアルミで作る事も出来ます。強度を増す事になります。また塀を直す時に古くなった部分だけ直せば良いので安く直せます。ランニングコストが安く、経年劣化による危険に耐えられます。
・板塀よりも経年劣化が早く、作り直さないと行けない。
ゆえにランニングコストが掛かる。
・古くなると汚くなるので、古くなると家の見た目の雰囲気を悪くする。
・竹垣の風情が出る
・壊れないのでメンテナンス費が掛からなく作り直す事が無い。
・汚くならない
・本物の風格や風情にはかなわない。
・本物に比べると安っぽく見える
・設置費用が本物の竹垣よりは高くなる。
・洋風の建物にはデザイン的に合わない事もある。
メリット
・風情が格段にある。建物が文化財のようなものならこれも良いです。
・歴史的な建造物に見える。
デメリット
・工期が長くなる
・コストが非常に高い
・土壁なのでもろい。水が雨で内部に入り込んで冬に凍りつき、爆裂と言って大きく崩れる事がある。
土壁だけでは、長持ちは期待できません。
かといって漆喰を塗るとお城の塀のようになり、きっちりしすぎます。その費用は更に高額になり、ブロックを立てて左官屋さんに漆喰を塗って貰った方が安価で頑丈な物が出来ます。
なので選択肢として漆喰の塀は極めて稀です。また、土壁は建築基準法の関係上、倒れても隣地や道路に影響を及ぼさない。敷地内に造らなければなりません。個人邸で作るのでは無く、お寺や文化財で専門の左官屋さんが作る事が多いです。庭師でも作れます。庭師が作ると、とても味わいのある土壁が出来ます。とても高額にはなります。
7生垣(樹を植える)
昔からの手法です。
種類によりさまざまな樹があります。
生垣にするときは場所の広さ日当たりを考えて樹種を相談して植える。
メリット、
・自然の空気が取り込める。
・庭内部の湿度が保てる。
(湿度が保てると庭の内部の植物の健康に影響がある。苔など)
・自治体では補助金も出るところもある。
・伸びたら切らなければならないのでランニングコストが掛かる。
・虫が発生したら消毒をする。また防虫の為に消毒をする。
・枯れる事もある。その場合は植え替える。
「綺麗に今しましたよ。」という意味です。あくまでも青葉と塵箸を置く飾りのような物です。
状況を判断して作ると良いでしょう。これは無くても困る事はありません。
⑨植栽
昔の本を見ると常盤木(ときわぎ)と申しまして、常緑樹を植えるのが良いと言われております。
しかし、もみじやニシキギあると秋の紅葉が楽しめますし、梅があれば春の彩りを楽しめます。
重要なのは、植えない方が良い樹をお伝えします。
理由はチャドクガです。
とにかく身体中がかぶれるので大変な事になります。
温暖化の影響で被害は拡大しています。サザンカもチャドクガがつきます。茶の木もつきます。
0.1ミリの毒針が空中に舞ってますので近づくだけでもかぶれます。椿やサザンカを植える際は気をつけてください。椿の葉を食べるチャドクガ・苔についてです。
関東は平野なのでなかなか苔を貼っても根付きにくいです。
京都のような中山間地の盆地の湿度の高い場所のようには行きません。
関東はとても樹木の成長が早いです。
京都で樹木を仕入れて東京で植えると急激に成長して樹木の形が崩れてしまいます。
京都は土が山砂ですから樹木が成長しないので、樹木の形にこだわり、植栽してもあまり形が崩れません。
なので、京都のようにしてほしいと言われる事も多いですが環境が違う事もご理解ください。
※これがだいたいの茶庭を造る際の流れですが、
一番大事なのは、何を誰とするかを考えてください。茶事をするのか、稽古をするのか、家族が眺める庭にするのか、
人は誰が来るのか、お弟子さん、自分の先生をお招きする。さらに偉い先生をお招きする。
友達が来る。家族だけの憩いの場所。
これを想定してください。
初めて造るならば、今の自分が思うより、立場の上の人が来る事を想定してください。
茶道具も最初は稽古にしか使えない道具を買う事が多いですが、茶の湯の経験が上がると良い道具が必要となります。
さらに経験を増すとさらに上の道具となります。
その時、稽古でしか使えない道具を買った自分を思い出し、
「なんでこんな物を買ってしまったのだろう、少しお金を出せば茶会に出せる道具が買えたのに!」と悔やむ事が茶人あるあるです。
また、良い道具を買うとなぜか実力が上がる傾向があります。
そのように、少し将来の自分為に今の自分より、良い庭を造ると良いです。
※最後に
簡単な説明でしたが少しでも、茶道を通して人生を楽しむと日々方々が増えると良いですね。
経験から言わせて貰いますと、亭主をやるようになって茶の湯が本当に楽しくなりました。