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歳を重ねる

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大好きな本に中島敦の「山月記」があります。

この中に、名人伝という話があり、弓の名人が弓を極めて行くと弓を使わなくても動物を仕留められる、さらに極めると弓を使うことすら忘れると言う話しがありとても好きな話しのひとつです。
この様な話しはいろいろな所で聞く話しです。
十牛図の話し、南方録はカネワリの話なのですが最後は利休がカネワリと関係無くお点前をして、カネワリを忘れてしまったと言う話しや
大徳寺の弧篷庵の忘筌席も由来は漁師が魚を獲る罠を魚を獲ってしまえばその罠を忘れてしまう。との意味です。
茶道の稽古をしていると先生が歳を重ねて「お点前を間違えて教えてしまった」
とおっしゃる事があります。
その時に「忘れてしまうと言う事は、次のステージに先生はお進みになっておられるのだ」と思います。
お坊さんが亡くなる事を遷化と言われます。
これは別の世界へ修行の場所を変えるとお聞きしました。
歳を重ねると忘れる事が多くなる。それは別の修行の場所へ今までの記憶を移動している最中なのだと思い。
歳を重ね忘れる事は尊い事だと思っております。
それは、しっかりと修行をなさって来た方のみが遷化するのであって適当な事をして忘れたのとは違います。
忘れることを周りから尊ばれる先生は素晴らしい先生です。

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